離婚協議書作成の方法とポイント
離婚協議書は、協議離婚に関する合意書ですので、後で争いにならないようにするために、離婚届に記入漏れがないようにすることに加え、これからご紹介する事項については必ず記載していただきたいと思います。
※ 離婚協議書は、あくまで協議離婚に関する合意書であるため、法的な執行力は伴いません。
そのため、お金に関する合意については、「債務を履行しないときは、直ちに強制執行を受けても異議のないことを認諾する」という文言(強制執行認諾文言)付きの公正証書を公証人役場において作成することをお勧めいたします。
このような公正証書を作成しておけば、裁判を経ることなく直ちに強制執行を行うことができます。例えば離婚協議書において合意した慰謝料や財産分与、養育費が約束どおり支払われない場合、裁判を起こさなくとも、相手方の給与差押えを行なうこともできるようになるのです。
お金については特に争いになることが多いので、お金に関する合意については、必ず強制執行認諾文言付きの公正証書を作成していただきたいと思います。
離婚協議書の作成の方法(特に記載しておくべき事項)
お金について
①財産分与について
婚姻期間に夫婦が共同で築き上げた財産はすべて共有の財産となります。ただし、婚姻前や別居期間中の財産については、財産分与の対象となりません。
夫婦の共有財産を分けるという清算的意味合いを原則とした上で、どちらか一方だけが離婚後に苦しい生活を送ることがないようにするという扶養的意味合いや慰謝料としての意味合い等も考慮して、財産を分けることになります。
ここで気を付けなければならないのは、相手側が財産目録にはない財産を隠し持っているケースもあるということです。
財産分与について詳しくはこちらのページをご覧ください。>>>財産分与についてこちら
②養育費について
お子様がいらっしゃる場合には、夫か妻のどちらかがお子様を引き取り、育てていくことになります。このとき、育てる側は相手方に対して養育費を請求することが可能です。子ども一人あたり月額3万円~5万円程度の養育費となることが多いですが、請求する側と請求される側の収入等を考慮して決めることになります。
養育費について詳しくはこちらのページをご覧ください。>>>養育費についてはこちら
③慰謝料について
よくテレビ番組などで離婚問題を取り扱う際に、大きく取り上げられるのが慰謝料の問題です。しかし、慰謝料は精神的苦痛を受けた場合に支払われるものであり、離婚において必ず発生するものではありません。この点、よく誤解されていることがあります。
例えば、離婚の原因が相手方の不貞行為、DVなどの酷い暴力というように、明らかに相手方に落ち度があり、酷い精神的苦痛を受けた場合には、慰謝料を請求することが可能です。
他方で、例えば、性格の不一致が原因で離婚する場合のように、明らかに一方に落ち度があるのではない場合には、慰謝料を請求することはできません。
また、慰謝料は財産分与に含まれるケースもありますので、その部分に関して明確に記載をしておくことが、後で争いにならないようにするためには重要です。
慰謝料について詳しくはこちらのページをご覧ください。>>>慰謝料についてはこちら
④年金分割について
合意分割(平成19年4月1日施行)、すなわち、夫と妻が年金分割をすること及び分割割合(按分割合)について合意すれば、離婚時に、婚姻期間の保険料納付実績を按分割合の限度を最大2分の1として分割できるという制度において、按分割合について合意が成立した場合には、その内容を書面にして署名押印したものについて、公証人役場で認証を受けるか、公正証書とする必要があります。
年金分割について詳しくはこちらのページをご覧ください。>>>年金分割についてはこちら
子どもについて
①親権者の決定
夫婦の間に未成年の子どもがいる場合、離婚後はどちらかの単独親権となるため、離婚後どちらを子どもの親権者にするか決めなければ離婚をすることはできません。
親権者の決定に際しては、何よりも、子どもの福祉(子どもの利益)を最大限考慮し、子どもの将来を最優先に、十分に考えて決めることが重要です。
親権者について詳しくはこちらのページをご覧ください。>>>親権についてはこちら
②監護権者の決定
監護権者とは、監護権を有する者であり、子どもを引き取って、子どもと生活をともにし、身の回りの世話をする人のことです。親権は監護権と財産管理権から構成されていますので、監護権者は、親権のうちの一部を有することになりますが、子どもの福祉(子どもの利益)を考えるならば、親権者が養育監護も行うことが原則といえます。
監護権者については、戸籍に記載されるわけではありませんので、後の争いを避けるために、必ず書面に記載しておくようにすべきです。
監護権について詳しくはこちらのページをご覧ください。>>>監護権についてはこちら
③面会交流について
離婚が成立した後、親権者や監護権者とならなかった親が、子どもと面会して一緒に時間を過ごしたり、電話や手紙で連絡を取ったりすることを面会交流といいます。そして、この権利のことを面会交流権といいます。
面会交流は、子どもが親と適切な関係性を築くことが、子どもの成長には必要であるという観点から行なわれるものです。つまり、自身の子どもに会いたいという欲求を満たすためだけではなく、子どもの目線で、子どもの成長を考えて行動することが重要になります。
面会交流について詳しくはこちらのページをご覧ください。>>>面会交流についてはこちら
離婚協議書の作成にあたっては、後で争いになるリスクを最小限にするために、細かな点であっても必ず記載するようにしてください。繰り返しになりますが、特に争いとなりやすいのは、お金に関する事項です。お金に関する事項について書面化する場合には、必ず強制執行認諾文言付きの公正証書を公証人役場で作成し、法的な執行力を持ち合わせた離婚協議書とすることをお勧めいたします。
当事務所では、離婚協議書の作成サポートも行なっておりますので、お気軽にご相談ください。また、ご自分で離婚協議書を作成される場合には、作成された離婚協議書をご相談の際にお持ちいただければ、内容等に問題がないかをアドバイスさせていただくことが可能です。
当事務所は、「離婚協議書診断サービス」を行っております。
詳しくは、こちらからどうぞ。
投稿者プロフィール
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弁護士 仙台弁護士会所属
専門分野:離婚
経歴:仙台生まれ。仙台第一高等学校卒業後、上智大学文学部英文科に進学。卒業後、平成14年に弁護士登録。勅使河原協同法律事務所(仙台)を経て、平成24年に高橋善由記法律事務所を開業し、現在に至る。主に離婚問題の解決に従事し、相談者の抱えている問題に寄り添いながら最適な方法を提案し、新たな人生の始まりをサポートしている。
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