財産分与について
目次
財産分与とは
財産分与とは、結婚してから夫婦が協力して築き上げた財産を、離婚に際して夫婦で分ける制度です。一刻も早く離婚したいという気持ちが強い方の中には、財産分与について十分な話し合いもせずに判断してしまう方がいらっしゃいますが、財産分与は、離婚後に新しい生活をスタートさせるために重要なものですので、十分に検討した上で判断するようにしていただきたいと思います。
財産分与の対象財産
財産分与の対象となる財産には、①共有財産②実質的共有財産があります。
共有財産とは、夫婦の共有名義で建てたマイホームのように、結婚後にお互いが協力することで築いてきた共有名義の財産です。
実質的共有財産とは、預貯金、株、不動産、自動車、退職金など、結婚後に夫婦で築いた財産ではあるものの、一方の名義になっているもののことです。このように、結婚後に夫婦で協力して築いた財産は、財産分与の対象となります。
また、プラスの財産だけでなく、住宅ローンや教育ローンなど、マイナスの財産も分与の対象となりますのでご注意ください。
① 共同生活に必要な借金
住宅ローン、自動車ローンや、不足している生活費を補うための借り入れや教育ローンなども、財産分与の対象となります。
② 共同生活とは関係ない借金
共同生活とは関係のない借金については、財産分与において、考慮されません。
財産分与の対象外財産(特有財産)
婚姻前に蓄えた預貯金や婚前前に購入した家具,結婚前に相続や贈与により得た財産、婚姻中に相続や贈与により取得した財産は、特有財産と呼ばれ、財産分与の対象となりません。
財産分与における考慮要素
財産分与においては、一切の事情が考慮されますが、主として、①清算的財産分与、②扶養的財産分与、③慰謝料的財産分与、④過去の婚姻費用の清算、の4つの要素が考慮されます。
①清算的財産分与
清算的財産分与とは、通常の財産分与と呼ばれているもので、夫婦が婚姻生活で協力して築いた財産を分けるという意味合いのものです。最近は、2分の1ルール(夫婦が協力して築いてきた財産を、原則として5:5の割合で分けるというルール)に則って判断されることが多いです。
②扶養的財産分与
扶養的財産分与とは、清算的財産分与、慰謝料の支払いがなされてもなお、一方の配偶者の生活が経済的に厳しいという場合、その配偶者に対し、一定期間の生活費という意味合いで支払われるものです。若い夫婦の場合、妻側の経済状況が悪化することが多く、主張されることがあります。
③慰謝料的財産分与
慰謝料的財産分与とは、慰謝料的な意味合いを含めて支払われる場合のことですが、実際上、慰謝料については、財産分与とは別に請求される場合が多いです。
④過去の婚姻費用の清算
離婚成立までの別居期間中に婚姻費用が支払われていなかった場合などに、その清算の意味合いで支払われるものです。
財産分与の4つのプロセス
財産分与は、結婚してから夫婦で築いてきた財産をどのように分けるかという問題です。ここでは、財産分与が決まるまでの4つのステップについてご説明いたします。この4つのステップが理解されていますと、財産分与に関する協議も適正に進めることができると思いますので、是非ご覧ください。
ステップ①共有財産のリストアップをしましょう!
まずは、夫婦の共有財産をすべてリストアップする必要があります。ここでいう共有財産とは、名義は関係ありません。注意が必要なのは、プラスの財産だけではなく、借金やローンなど、マイナスの財産もリストアップするということです。
ステップ②リストアップした財産を計算しましょう!
次に、ステップ①にてリストアップした財産の価値を基準時にあわせて算定することが必要になります。
ステップ③財産分与額を計算式から算出しましょう!
ステップ②で算出した財産の総額から計算式を用いて財産分与額を計算します。ここに、2分の1ルールが適用されます。一般的には、財産分与は夫から妻へ分与する場合が多いですが、夫よりも妻の収入が多い場合は、その逆で妻から夫に分与が行われます。
ステップ④具体的に財産分与の方法を決めましょう!
決定した財産分与額に従い、現金、預金などの財産を分与します。その際、不動産や株は取得時よりも評価が高まっている場合がありますので、不動産や株を分与された側から相手側に現金で差額を支払ったり、不動産、株そのものを売却し、分与の割合にあわせて売却代金を分配することで対応します。
財産分与は2年以内に請求しましょう!
財産分与の請求はいつでもできるというものではなく、離婚から2年を経過すると、請求権が消滅してしまいます。「請求したら期限が過ぎていて、財産分与を受けられなかった・・・。」ということがないように、必ず離婚から2年以内に請求することを忘れないようにしてください。
できれば、財産分与については、離婚する際にきちんと決めておくべきです。
財産分与においては、様々な財産が対象となり、また様々な要素を考慮して決めることになりますので、判断が難しい場合があります。
財産分与についてご不明の点がありましたら、財産分与問題に精通した弁護士にまずはご相談ください。
投稿者プロフィール
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弁護士 仙台弁護士会所属
専門分野:離婚
経歴:仙台生まれ。仙台第一高等学校卒業後、上智大学文学部英文科に進学。卒業後、平成14年に弁護士登録。勅使河原協同法律事務所(仙台)を経て、平成24年に高橋善由記法律事務所を開業し、現在に至る。主に離婚問題の解決に従事し、相談者の抱えている問題に寄り添いながら最適な方法を提案し、新たな人生の始まりをサポートしている。
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