医師の方に特有の離婚問題
目次
夫婦の一方が医師の場合、通常の家庭とは異なる特有の問題があります。
ここでは、一方が医師の場合に注意しなければならないポイントについてご説明いたします。
医師・医者の婚姻費用や養育費の算定
婚姻費用とは、夫婦が結婚生活を送るために必要な生活費です。離婚成立まで、別居中でも請求することができます。
配偶者の一方が医師の場合、年収が2000万円を超えることが多々あります。
一般的な婚姻費用・養育費は、当事者の収入等をベースとする家庭裁判所の算定表に基づき算定されます。
しかし、算定表に記載されている年収の上限が2000万円であり、これを超える場合は、婚姻費用・養育費の金額がいくらに
なるのかについては、考え方がいくつかあって、交渉次第というところもあり、弁護士の交渉力に左右されることになります。
医師・医者の財産分与
財産分与の清算割合について
財産分与においては、妻が専業主婦であっても、分与の割合は原則として2分の1とされています。しかし、財産分与は、結婚してから夫婦が協力して築き上げた財産を、離婚に際して夫婦で分ける制度ですから、共有財産の形成に対する夫婦の貢献度を考慮して、財産分与の割合を決めることになります。
医師の方が離婚する場合に、よく問題となることがあります。それは、財産分与における、いわゆる2分の1ルール(財産分与の割合を原則として2分の1とするルール)が適用されるのかという問題です。
<一般的な財産分与の対象(夫婦共有財産)> 以下のものが挙げられます。
ア 不動産
イ 預貯金
ウ 生命保険類
エ 株式、出資持分などの有価証券
オ 自動車
カ 家財道具などの動産
キ 将来の財産(退職金や年金など)
医師の方の場合、一般世帯以上に資産を有していることが多いため、まずは上記の財産を正確に把握することが重要となります。一般の方よりも相当高額な収入を得て、高額な財産を形成していることが多いのですが、それはその医師の方個人の特殊な能力や努力等による部分が大きいといえます。そのため、財産分与においては、その方個人の特殊な能力や努力等の事情を考慮して、分与の割合を決めることになり、2分の1ルールをそのまま適用するわけではありません。実際の裁判例においても、2分の1ルールを適用しなかった事例があります。
医療法人の出資持分
婚姻後に、夫婦のいずれか一方(あるいは両者)が出資をして医療法人を設立し、その後、夫婦共同生活が破綻した場合には、原則としてその医療法人にかかる夫婦の出資持分は、財産分与の対象財産となります。
このような医療法人の出資持分を財産分与として清算する場合には、その価値をどのように評価するかが問題となります。医療法人が不動産を持っている場合等は、評価方法次第により、その出資持分の評価額は大きく変わります。
高収入の者の離婚では財産の見落としに注意
医師の方のように収入が高い方の離婚では、財産の調査に注意が必要です。
一般的にはあまり重要ではない財産が、実は価値が大きい、ということがあるのです。
⑴ 高価な腕時計、宝石等の貴金属の評価が高価となることもある
これらは動産の一種です。
一般的に、動産については、価値が低く、あまり気を遣わない傾向があります。しかし、収入が高い家庭では、装飾品として貴金属を購入、保有している、ということも多いです。
これらについては、一見して価値がどのくらいあるのかを判断することが難しいです。実際に、念のために時価評価の鑑定を行ったら数百万円の評価額があることが判明したケースもあります。
⑵ 会員権の評価が高価となることもある
例えば、ゴルフ会員権などの会員権についても、高価な評価となることもあります。実際には、取引相場があまり明確ではないということも多いです。
そのため、評価の方法によって大きな違いが生じる傾向があります。
上記のような財産について、その存在を調査したり、評価するには、高度な専門的知識が必要となります。
したがって、離婚問題を専門とし、かつ、財産分与を得意とする弁護士にご相談されることをおすすめします。
以上の他にも、医師の方が離婚する場合、一般の方とは異なる特有の問題が生じることがあります。
当事務所では、これまでにも医師の方の離婚事件を多く取り扱ってきておりますので、お困りの点がおありでしたら、まずは一度ご相談いただければと思います。
投稿者プロフィール
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弁護士 仙台弁護士会所属
専門分野:離婚
経歴:仙台生まれ。仙台第一高等学校卒業後、上智大学文学部英文科に進学。卒業後、平成14年に弁護士登録。勅使河原協同法律事務所(仙台)を経て、平成24年に高橋善由記法律事務所を開業し、現在に至る。主に離婚問題の解決に従事し、相談者の抱えている問題に寄り添いながら最適な方法を提案し、新たな人生の始まりをサポートしている。
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